2U chocolate では Bean to Bar を中心としたクラフトチョコレートを製造販売しておりますが、その価格は「1袋(50g)=1,000円」程度であり、スーパーやコンビニで販売されている100円〜200円のチョコレートと比べると圧倒的に価格が高いです。

高価格になってしまっている主な理由は「小規模製造で効率が悪い(=たくさん作れない)」からであり、実のところ現在の価格でも経営的には厳しいところがあります。

一方で著しい高価格は「Bean to Bar の魅力にもっと触れてもらいたい」「普段から手軽に食べてもらいたい」という想いの実現と矛盾するので、価格設定は常にジレンマとの闘いでもあります。

以下で具体的な数字を挙げながら 2U chocolate の価格設定、大手メーカーさんとの違いについて説明しておりますので、価格の成り立ちをご理解いただいた上で 2U chocolate の価値を見定めていただければと思います。

月間製造数量上限から考えるチョコレートの価格

「大規模製造」と「小規模製造」のメーカーで何が違うかと言うと、その言葉通り「製造数量」が違います。

小規模製造である 2U chocolate は現在の製造方法、体制ですと月間40kg程度が製造数量の限界です。(※2022年10月現在)

1袋=50gとすると、月間製造数量の上限は「40kg÷50g/袋=800袋」であり、1袋の価格を1,000円とすると月間の売上上限は「800袋×1,000円=80万円」となります。

ここで例えば1袋の価格を200円とすると、最大限売り上げても月間で16万円の売上にしかなりません。

製造数量と売上の関係
月間製造数量の上限が決まっているので、1袋の価格次第で月間売上の上限が決まってくる

チョコレートを製造するためには場所代、製造設備費、原材料費、光熱費そして人件費等、色々な費用がかかるわけですが、その支出を上回るだけの売上がなければ経営は成り立ちません。

月間16万円の売上では少なすぎるのは直感的にイメージいただけるかと思いますが、実のところ1袋=1,000円にして80万円の売上を作っても支出の方が大きくなってしまうこともあります。

次項では大規模製造メーカーの場合と比較しながら「小規模製造で効率が悪い=人件費がかさむ」という点についてご説明したいと思います。

製造に時間がかかる=人件費がかさむ

小規模製造と大規模製造の比較として、月間製造数量40kgとその1,000倍の40トンで考えてみたいと思います。

上記の通りチョコレートの製造には場所代や製造設備費、原材料費、そして人件費等々の費用がかかるわけですが、製造規模が小さく効率が悪い、つまり製造に時間がかかってしまうほど人件費の占める割合が大きくなってしまいます。

例えば 2U chocolate で月間製造数量が40kg(1袋50gとして800個)とすると、1ヶ月に20日間製造を稼働させたとして、1日平均2kg(=40袋)の製造が必要です。

1回あたりの製造量は概ね2-3kgで、一つ一つの工程に時間がかかり完成までにトータルで2週間程度要しますので、複数の工程を同時に動かしたとしても1日平均2kgというのはそれなりの製造量であることがイメージいただけるかと思います。

そして、この量を製造するのに2人の人員を投入したとすると、1人あたり月間20万円だったとしても月間40万円の人件費となり、1個あたり1,000円で販売し月間の売上が80万円あった場合に売上に占める人件費の割合は40万円÷80万円=50%となります。

売上に占める人件費の割合(小規模)
人手と時間がかかる割に製造数量が少ないと人件費の割合が高くなる

このように人手や時間がコストに大きく影響するので、2U chocolate の商品ラインナップそれぞれの価格は人手(時間)がかかっているものほど(=作るのが大変なものほど)概ね高くなっています。

 

一方、大規模製造で月間40トン(1個50gとして80万個)製造する場合に、どれくらいの人員が必要でしょうか?

大規模食品工場を見学したりテレビで映像を見たことがあるかもしれませんが、大規模になればなるほど製造工程のほとんどを機械が担うようになるため、作業自体に人員が必要な場面は著しく少なくなります。

人が担うのは製造工程全体や個別機械の調整等、管理業務がメインとなるため、例えば大がかりな機械化により月間40トンという製造数量を50人で担えたとすると、1人あたり月間50万円として1ヶ月の人件費は2,500万円となります。

仮に1個あたり200円で販売したとすると、月間の売上は1億6,000万円となり、売上に占める人件費の割合は約16%となります。

売上に占める人件費の割合(大規模)
機械化により製造を効率化することで人件費の割合は低くなる(初期の設備投資は大きくなる)

もちろん大規模製造には大規模な場所と製造設備が必要なため初期投資は大きくなりますが、効率よく大量に製造し販売していくことで人件費等のランニングコストを抑えつつ初期投資を回収していくことができるのです。

以上ラフな例示ではありますが「小規模製造で効率が悪い=人件費がかさむ」という部分をイメージいただけたのではないでしょうか。

高価格を超える価値を提供するために

2U chocolate の現在の製造方法、体制において、たくさん作れないために高価格にせざるを得ないのは上述の通りですが、この価格でチョコレートを販売する以上、その価格を超える価値をお客さまにお届けしなければなりません。

製造に時間がかかってしまうのは現状では避けられないので、2U chocolate が提供する価値の第一義である「カカオの個性を愉しんでもらう」という部分を形作るために最大限の時間を使い、その他の部分で効率化可能な部分を極力省力化することで、価格に対する価値を最大化するように努めています。

Bean to Bar の製造工程で具体例を挙げると、例えば「焙煎工程」で「各カカオ毎に最適な条件を見出すためにテストを繰り返すこと」や「メランジング工程」で「数十時間かけて風味やなめらかさを整えること」は製造効率の悪い部分ですが、これらは「カカオの個性を最大限に引き出す」ためには必要不可欠な部分なので十分に時間をかけています。

カカオ豆
各カカオ毎に最適な条件を見出すためにテストを繰り返している

また「多品種多産地のカカオを取り扱い、バリエーション豊かな商品ラインナップを揃える」ことも製造面では非効率となりますが、これも「カカオの個性を食べ比べる愉しさ」「お気に入りのカカオを見つける愉しさ」をお届けするために一貫して採用している方針です。

一方で例えば「テンパリング工程」では「各カカオ毎に最適な条件を見出すためにテストを繰り返すこと」は行っていません。

これは、テンパリング工程で結晶を整えることは口溶けやフレーバーリリースに影響を与えますが、各カカオ毎に厳密さを追究してもその部分に大きな差異は現れにくいため、いくつか準備している基本的な条件のいずれかを適用する形で効率化を図ったほうがコストダウンの観点でお客さまにメリットがあると考えているからです。

チョコレート生地の取り出し
条件設定を選択式にすることでテンパリング工程は効率化を図っている

以上のように「カカオの個性を愉しんでもらう」を軸に据え、あらゆる部分で「時間をかける部分/効率化を図る部分」にメリハリをつけることで、高価格を超える価値を創り出そうとしているわけです。

価格の意味と提供価値を知りステキなチョコライフを!

世の中には非常に多くのチョコレートやチョコレート菓子が存在しますが、その全てにメーカーさんが届けたい価値が宿っています。

そしてそれぞれに付けられた価格もまた、メーカーさんの経営を成り立たせるためにそれぞれの製造体制や理念などを踏まえて設定されています。

2U chocolate での価格設定の意味合い、提供価値の追究は上述の通りですが、これを「良きもの」と捉えていただけるかどうかはそれぞれのお客さまの価値観次第。

シンプルに味わうだけではなく、そのチョコレートがその価格で販売されている意味を知ることでまた違った見え方が出てくるかもしれません。

ぜひ色々な情報を知っていただいて、一層ステキなチョコライフをお愉しみいただければと思います。

 

 

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